未完成だけどこんなこと思ってました。
春は終わりと始まりの季節。
卒業シーズンを過ぎた今だが、ことアメリカのPh.D.課程では決まった卒業日がないので、一年のどの日に博士論文発表を終えて卒業しても構わない。
それでもこの自粛生活の中、オンラインで博士発表を終えて晴れて学位を手にしている一年上の先輩方を見ると、なんだかしんみりする一方で、「え、俺絶対に一年後こんな状況にはなってないんだけど?」という焦りが生じる。
さて、今日紹介する論文は卒業生ではないものの、うちの免疫プログラムの一個上の学年の先輩が出した論文だ。彼ももうすぐ卒業するのだろう。他人と比較するなって言われてもね、無理よね。つらみざわ。
君は君だと思うけど、落ち込み癖強めかもね。たまに落ち込むと良い事もあるだろううけど、しっかりして!:)
A Two-Cell Model for IL-1ß Release Mediated by Death-Receptor Signaling (Donado et al.)
カルロスは南米のどっかの国の出身で、シュッとした抜け目のない男だ。慣れないと、少し怖い印象もある。
なまりのない綺麗な英語とスペイン語かなんかを話すバイリンガルで、知識量も豊富、運動も欠かさないし、身につけている洋服も高価。なんでも実家が大金持ちらしい。
その無限な知識と頭の回転の良さに裏打ちされた自信は彼の姿勢をまっすぐなものとし、その魅力的な姿で数々の女性を魅了する。
カルロス 凄いな。
最近そういえば人物が登場してるな。何故かな。
私の尊敬する人紹介すれば良い?
ここまでなぜか筆頭著者のカルロスの説明になってしまったが、そんなカルロスの論文は、
「デスレセプター経路を介した(やりとりする)二細胞によるIL-1ß(なんか良いこと)放出モデル」という題で、具体的に二細胞とはiNKT細胞(自由に発言する特徴)と樹状細胞 (あるいはマクロファージ(君)でも可)のことである。
(
ILー1βは なんか良い事って意味な気がするけど、前は炎症性サイトカインだったからネガティブなイメージ。IL-1βと言うものは良い種類と悪い種類がいるのか。良い細胞vs悪い細胞みたいに。最後のとこだと細胞死的なこととするとmakes sense.?
iNKTとはインバリアント (i for invariant)NKT細胞で、すなわちいわゆるαßT細胞のように抗原提示細胞のMHC+ペプチドに合わせた形が違うことのない普遍(すべてのものに行き渡る)なTCRを持つ自然免疫系のT細胞とでも思えばいい。認識するのはMHCに乗ったペプチドではなく、CD1dという分子に乗った脂質抗原だ。細菌由来の脂質の場合もあれば、内因(その物の中の問題)性の脂質の場合だってある。
一つ前の記事ではDNA傷害に応答するとしAIM2インフラマソームが登場したが、例えばNLRP3(私が怒る刺激)インフラマソームは細菌感染応答として働くことが多い。ただ細菌というのは、感染先の細胞の免疫システムを巧妙にくぐり抜ける術を持っていることも少なくなく、例えばこのNLRP3インフラマソームを阻害して細胞死や炎症性サイトカインIL-1ßの放出を防いだりする。
カルロスの疑問は、端的に言えば「細菌に阻害されたらもうそれで試合終了なのか?」ということ。
そして端的に言えば、答えはNOなのである。
疑われたらもう終わりなのか? 答えはno
どういうことかというと、例えば確かにマクロファージ(君)や樹状細胞を用いた培養実験では、細菌感染に応答したインフラマソーム(私)は適切にIL-1ß(良い情報/悪いもの)を放出できない。先述の通り、経路が細菌の持つタンパク質によって阻害されているからだ。
ただ、実際の生体内は培養皿とは異なる。すなわち、これらの細胞の周りには、別の細胞種がいて、そいつらとの接触や相互作用によってどうにかIL-1ßが放出される機構(メカニズム)があってもいいんじゃないか、とカルロスは考えたわけだ。
実験中は最近感染している私は適切に情報(IL-1ß)を出せない。前に言ったように、細菌に邪魔されてるから。だけど、実際の生体内(今)は培養皿(前の実験中)とは違う。
ここで目をつけたのが、過去にもこれらの細胞との相互作用が報告されていてiNKT細胞(自由に発言する特徴)というわけだ。
手始めにTLRを刺激した (プライミングした)樹状細胞(君)とiNKT細胞(自由に発言する特徴の私)を共培養するだけで、インフラマソームの刺激剤を加えた場合に匹敵(釣り合うような)する量のIL-1ß(情報交換?)を放出した。(なお詳細は省くが、プライミングとはざっくりいうと主にNF-κBのターゲット遺伝子発現を高めることで、インフラマソームの材料を細胞内に用意しておくことをいう。例えばIL-1ßの前駆体やNLRP3そのものが発現誘導される。インフラマソーム(私)の活性化に伴い、IL-1ß(情報)は切断され、細胞の外へと放出されるわけだ。)
ちなみにこの現象は、単に樹状細胞(君)をiNKT細胞((自由に発言する特徴の私)の培養上清(なんかの液)を加えても起こらない。すなわちこれらの細胞が実際に接触して初めてこの現象が起こることがわかる。(会ってみないとわからない)
そしてImmGenというデータベースでiNKT細胞表面に特異的な分子を探し、FasLに注目した。主にデスレセプターを介したアポトーシスの誘導を引き起こすことで有名な分子だ。
実際、FasLを抗体でブロックしたりノックアウトしたりすると、このIL-1ßの放出は全く見られなくなることから、iNKT細胞(自由に発言する特徴の私)のFasLが重要であることが明らかとなった。またiNKT細胞非存在下(静かにしてる私)でも、単にリコンビナントのFasLを添加して同様にプライミング後の樹状細胞(君)からIL-1ß(情報)の放出が見られた。
ということで、以後はその分子機構についての解析であるが、ざっくりいうとFasシグナルにおいて中核を担うCaspase-8がCaspase-1を切断し、NLRP3(私が怒る刺激)を介さずにインフラマソーム(私)の下流の部分、すなわちGasdermin-DやIL-1ß(情報)の切断を引き起こす、という結果を導いた。このCaspase-8がCaspase-1を「直接」切断している、という考察はどちらかというと過去の知見に基づいてなされているように感じるが、少なくともCaspase-8を欠損した細胞ではCaspase-1の切断や下流のイベントは見られない。
ここまでから、NLRP3(私が怒る刺激)が阻害された場合でも、プライミングされている樹状細胞(君)はiNKT細胞(自由に発言する特徴の私)の力を借りてIL-1ßを放出できることがわかった。先にも触れた通りGasdermin-Dも切断されており、実際にGasdermin-Dを欠損した細胞では細胞死やIL-1ßは抑制される。
一方、Fasを介した細胞死として知られているのはアポトーシス(自殺)だ。
ということで、カルロスはFasLを刺激したプライミング樹状細胞はどのような細胞運命を辿るのか、その「死に様」をライブイメージングで捉えることにした。
結果だけいうと、細胞はFasによってアポトーシスをするとフェイントをかけて急に破裂的な死(=ネクローシス)を引き起こす、というものだ。核内のDNAが凝集および断片化するアポトーシスに特徴的な現象と、細胞膜が風船のように膨らんで破裂するネクローシスやピロトーシス様の現象の複合体として、断片化したDNAが核膜破裂とともに細胞質内に飛び出してその後細胞の破裂とともに細胞外に出ていく場面を捉えている。(記憶が曖昧だけどそんな感じ)
最後の細胞死のあたりはぶっちゃけ複雑だし、個人的に大切なのは死に方の定義というよりも、最終的に細胞が破裂するかやIL-1ßが放出されるかだと思うので細かいことは気にしない。
が、iNKT細胞(自由に発言する特徴)を加えた場合のフェノタイプやノックアウトでの切れ味が美しいので流石だなと感じた論文でした。
とりあえずはっきり怒ることは良いことだ。
僕は一体いつになったら(略)
いつになったら。。。信じてもらえるのか? 怒ってもらえるのか。。かな。。