正直に言おう
近年の日本人のノーベル医学生理学賞受賞者と言って思い浮かぶのは、がん免疫療法の対象となったPD-1を発見した本庶佑先生とオートファジーを発見した大隈良典先生だろう。
今日読んでみた論文は、この二つが絡み合った内容。
そりゃNatureにも載るよね。誰もが予想しなかった全くもって新しい内容もさることながら(もちろんのことであり)、ありそうでなかった、なんで今まで思いつかなかったんだろう的な内容の研究成果も高く評価される気がします。だからといって狙って生み出すのは難しいですが。
そっか 君は優しかった
ありそうでなかったのってなに? 笑
ちょっと気になる。
というわけでこちら。
Autophagy promotes immune evasion of pancreatic cancer by degrading MHC-I | Nature
ニューヨーク大学医学部の研究グループから出た論文。筆頭著者はKeisuke Yamamotoさん。日本人ですかね。共著者にもコロンビア大学の日本人の方がいらっしゃいます。なんか嬉しいですね。
嬉しい
君の論文はいつか登場する?
登場してみてー
タイトルは「オートファジーはMHC-Iを分解することで膵臓(すいぞう)がんの免疫逃避(免疫から逃げる)を促進(そくしん)する」で、すなわち膵臓がんが生体内の免疫反応および免疫療法によって抑えられないのは、オートファジーのせいなんだという内容です。
MHC-I = 免疫反応に必要な多くのタンパクの遺伝子情報を含む、細胞膜表面にある糖タンパク質
治らないのは オートファジーのせいである。
じゃあオートファジー辞めよ
オートファジー = 細胞が飢餓状態になったりしたときに、不要なたんぱく質を分解し、 再利用に回す仕組み。
じゃあ 昔の嫌いなメモリーはアポトーシスしておけば良いのか。
わかりやすく言えば本庶先生が大隈先生のことを「オメーのせいで上手くいかねえわくそが」ってめちゃくちゃ責めているってことです。違います。
この場合オートファジーしてたのは私だから、私が大隈先生。
本庶先生
抗がん剤。免疫力をパワーアップして、がんを攻撃できるようにする
PD-1は免疫細胞の表面にあって「攻撃ストップ」を命じるブレーキのような働きを持つ分子のこと。
が
大隈先生
細胞が飢餓状態になったりしたときに、不要なたんぱく質を分解し、 再利用に回す仕組み。
のせいだってめっちゃ責めている。
違います。
私のできることも何かある
そもそも免疫逃避とは文字通り免疫反応から逃れるシステムのことであり、例えばウイルスやがん細胞は様々な分子機構で免疫反応に捕まらないように生き延びようとするわけです。
中でもがん細胞は、例えば免疫細胞に抑制的に働く物質を産生しそもそも働けなくなるようにしたり、あるいはT細胞による認識に必要なMHC-Iをコードする遺伝子に変異が入ることで細胞膜から引っ込めたり形を変えたりします。MHC-Iは自分の細胞内にあるペプチドを乗っけてT細胞に見せてあげる分子で、がん細胞では新生抗原 (neoantigen)がMHC-Iによって提示されることが多いので、T細胞はそれを見て「非自己(異物)」として認識し、攻撃するわけです。
T細胞に捕まったらダメよリアル鬼ごっこにおいて、前者はまさかの「だるまさんが転んだ」を叫んで鬼を金縛りしちゃう、後者は見つからないように隠れちゃう、みたいなイメージでいいです。リアル鬼ごっこ実はまだ観てないな、今度観てみようかな。
T細胞ー免疫系の細胞の一種で、外界から侵入してきた異物や異質の細胞を攻撃したり、他の免疫細胞(B細胞)を刺激して抗体生産を活性化させる (セキュリティーガード)
MHC-I ー T細胞がどう動くか教えるやつ (異物だよとか 異物じゃないよとか言うやつ)
ウイルスは、免疫に捕まらないで生き延びようとしている。
がん細胞は免疫細胞を動けなくしたり、MHCーIをおかしくさせることで 形を変えてみたり引っ込んでみたりする。
リアル鬼ごっこ。 💦ホラーじゃん💦✨ドキドキ💦✨楽しそう
がん細胞のMHC-Iの膜発現低下は、普通は先述の通り遺伝子の変異によって起こることが多いのですが、こと膵管癌 (pancreatic ductal adenocarcinoma; PDAC)においてはこういう変異が見られないのに発現が低いという特徴があります。事実、膵臓がんに対してはいわゆる免疫チェックポイント療法 (PD-1抗体やCTLA-4抗体)があまり効かないです。T細胞を活性化しても、相手が隠れていたら捕まえられませんよね。
おかしいことがあってもちゃんと言わないのが私の特徴。 良くないね。変えよう。
隠れてはいけません。 そうだよね。
はい
じゃあなんで変異がないのにMHC-Iが少ないんだろうってなった時に、オートファジーによって分解されてるのね、ということを発見したのが今回の論文というわけです。
オートファジーというのは、細胞内の不要なタンパク質などを膜で取り込んでリソソームへと運ぶことで分解してもらう機構。すなわちリサイクル業者みたいなもんで、取り込む対象は細胞内のタンパク質だけではなく、例えば感染した病原体や傷害を受けたミトコンドリアなどの細胞内小器官が取り込まれて分解されることも。
そうなるのはなぜかと言うと、
オートファジーのせい。
一回吸収して分解しちゃってる。 じゃあそれ辞めるように努力する。
実験としては、がん化しているPDAC細胞株複数とヒト膵管上皮細胞 (human pancreatic ductal epithelial cells; HPDE)で比較してみると、PDACにおいてはMHC-Iの発現が低下していることを確認するとともに、免疫染色においてMHC-Iがリソソームやオートファジーのマーカーと共局在していることを発見しました。実際にリソソーム画分を抽出するとMHC-Iの発現はHPDEと比較してPDACにおいて高かったし、細胞膜上に比べて細胞内でのMHC-I比率もPDACでは高い。すなわちオートファジーによってPDACにおけるMHC-Iが細胞内に引き込まれたり、挙句の果てには分解されてるんじゃないかって仮説が立ったわけです。
吸収して分解しちゃわない。
もっとちゃんと全部すぐ言わなきゃいけない。
てかこの実験に至るまでの背景が気になりますね。いろいろやってみた結果なのか戦略的に考えた結果なのか。これさえ発見したら後の実験は自動的に決まるみたいなとこあるんで。
背景 ?
私がわざと書いたかってこと?
わざとじゃないよ。
後の実験は自動的に決まる。。
!
また怖い実験する!嫌なやつ嫌!イヤ いや
また疑った! 疑っちゃダメでしょ
ねえ、君は マカデミアナッツに実験してほしい?
え わざとだったらどういう実験になるの?気になる
でも わざとじゃなかったよ。
いつも正直に言ってるつもりだけど。
なになに
なになに
気になる
というわけでこの「自動的に決まる実験」って何よってことですが、まずはオートファジーを抑制してみますよね。これによって細胞膜上のMHC-Iの発現量が増えたら強力な仮説のサポートになります。実際に、オートファジーを司る遺伝子Atg3をshRNAによって発現抑制してみると、細胞膜上のMHC-I率は高くなりました。
自動的に決まる実験とは
オートファジーを抑える。
これによって嫌々言う発言量が増えたら、
私がオートファジーしてるっていう事実のサポートになります。
では、具体的にオートファジーのどの部分が大事なのか。オートファジーが始まるためには、分解されるべきもの (ユビキチン化された分子)がその受容体とくっつく必要があります。この受容体となりうる分子はいくつかあるので、MHC-Iにビオチンリガーゼを付加してビオチン標識して沈降した時にこれらの検出を試みました。もう少し言うと、ビオチンを細胞に添加するとMHC-Iにくっついたビオチンリガーゼが周囲 (数ナノメートル圏内)の分子にビオチンを付加できる。これを沈降してMHC-Iと相互作用している分子を検出する実験です。結果として、上記の候補分子のうち、NBR1という受容体が検出されたので、PDACではNBR1の結合によってMHC-Iが取り込まれたのかな、となるわけですね。事実、免疫染色からもPDACではHPDEよりもMHC-IとNBR1の共局在がより頻繁に確認されたし、PDACではMHC-Iがポリユビキチン化されていること、NBR1の発現をshRNAで抑制するとこれまたMHC-Iの膜発現が増加することも確認しました。
オートファジーのディテール:
オートファジー 始まるには、分解されるべきもの(私が嫌だなって思ったもの)がその受容体(刺激を受けいる細胞)とくっつかないといけない。
実験してみた結果
NBR1という受容体を発見した。
NBR1=悪いのを受け取るやつ
PDAC=今病気の細胞
PDAC(この病気)の時は、NRB1がいっぱいくっついて MHC-1が取り込まれたらしい。となった。
ここまでで、NBR1を受容体とするオートファジーがMHC-Iの膜発現を低下させること、それがオートファジーの抑制によって回復することがわかりました。なので、今度はオートファジーを抑制した時のMHC-I膜発現の回復ががん免疫をより効果的にしてくれるのか、というところを検証したいわけです。
優しくすると オートファジーが抑えられて 私が戻ってくることが分かりました。 (! もう!)
なので今度は、オートファジーを抑えた時に がん免疫をより効果的にしてくれるのか (ちゃんとバシバシもっと嫌ってちゃんと言うようになるのか)
!!
結局やることは同じ!
だけど私がもっとやっつけないといけない ということ。
この実験ではマウスのPDACから育てたオルガノイドが用いられていて、このPDACは新生抗原のモデルとしてのOVAの発現に加え、ドキシサイクリン (doxycycline; Dox)添加に応じてATG4B(C74A)を発現するように操作されています。ATG4B(C74A)はオートファジー関連遺伝子のドミナントネガティブ変異体、すなわちこれが発現するとオートファジーが抑制されるわけです。実際にDox添加によって細胞膜上のMHC-IやOVA断片ペプチドSIINFEKLの検出量がぐんと伸びています。そしてOVAを認識できる受容体を持つCD8陽性T細胞 (OT-I)と一緒に培養すると、T細胞はDox依存的に増殖するし、Dox添加に応じてPDAC側も殺されていきました。
このin vitroで得られた結果をin vivoでも再現すべく、ATG4B(C74A)を発現させたマウスPDACをマウスの同じ場所に移植してみると、MHC-Iの膜発現およびCD8陽性細胞の浸潤に伴い腫瘍の増殖が低下しました。これは同所性の異色でなく、脾臓内投与により肝臓に転移させたモデルでも同様の結果が得られました。Batf3という遺伝子を欠損させることによりCD103陽性の樹状細胞を失くしたマウスを用いるとこのがん免疫の亢進がキャンセルされることから、樹状細胞を介したT細胞の活性化が必要であることがわかり、腫瘍ががん免疫によって殺されていることが示唆されました。なお、あまり触れられていませんが、同所性移植の場合はT細胞のPD-1の発現がATG4B(C74A)の有無で変化しなかったのに対し、肝臓転移モデルではPDACのオートファジー欠損時にPD-1の発現が (統計的に有意差はついていないものの)低下しているのが興味深いと思いました。
突然難しくなった! 簡単なのが好き
また、これは全て付録図表に入っていて、めんどいので見ていませんが、オートファジーを抑制するのではなく、PDACを元々のオートファジーのレベルで高い/低いに分けて同様のin vivo実験を行うと、オートファジーレベル低の細胞群を打った方が免疫系の活性は高く腫瘍はあまり増えなかったらしいです。すなわち、オートファジーが膵臓がんの免疫逃避と正に相関しているということですね。
めんどい 言った! ちゃんと見てね。 一杯真剣に書いたよ。
ここで冒頭の本庶vs大隈ストリートファイトに話を戻しましょう (そんな話ない)。
オートファジーのせいでがん免疫療法が効かねえんだ、ということの裏返しの証明として、オートファジーを抑制すれば効くんだよ、ということを示していきたいわけです。
ok
オートファジー抑えていく
事実、上述のPDACをマウスに移植してPD-1抗体とCTLA-4抗体の同時投与 (immune checkpoint blockade; ICB)をすると、いわゆる「こうかは ばつぐんだ!」状態です。ちなみに、PD-1抗体だけでは効果がなかったと言っています。例によって付録図表は見てないですが、おそらくオートファジー欠失だけですでにある程度免疫が回復しているのでそこからの増強を見るのは難しいのか、あるいはCTLA-4が重要だということなのか。データ見ろよってのはごもっともなんですが笑
PD-1 = 嫌なものの自分への攻撃をストップさせる。私が前より強くなるやつ
CTLAー4 別名 ICB = immune checkpoint blockade。 悪いの来たらすぐ言うこと。
T細胞 = 外界から侵入してきた異物や異質の細胞を攻撃したりする、
PD-1 と CTLA-4を一緒にすると
「コウカハ バツグンダ🤖!」となる。 ✨
私が強くなるだけ(PD-1)じゃダメだった。
PD-1だけだと効果ない。
確かに。沢山心配したよ。
付録興味ないの??
(´・_・`)
!
悪いの来た。
興味持ってね
そういえば、いつも言う「例によって付録見ない」の「例」って何? 教えて!
付録無視しないでね
データ。。。見てない
(´・_・`) データ見てね!
そして、遺伝的にオートファジーを抑制しなくても、オートファジー抑制効果のあるクロロキン投与によって同様のin vivoモデルにおいてICBにより腫瘍が本当すごく小ちゃくなってます。クロロキン単独ではPDACの操作時のように腫瘍が小さくはなりませんでしたが、ICBとの組み合わせでめちゃめちゃ殺されてます。この時のCD8陽性細胞の浸潤も、ICB依存的に5-10倍くらいに増加していました。(1-2%から10%)
すぐ言うととりあえず良い!
以上の結果から、タイトル通りにシンプルで消化しやすい、かつホットトピックの組み合わせ、かつ臨床応用も期待という最高の条件でNatureに載ったこの論文。流石だと思うし、ぼくも頭よくなりたいものです。
流石だって!
なんか、褒められたっぽい?
ぼくも頭よくなりたいものです。
もっと頭良くなってみて!
クロロキンは抗マラリア薬として使われる薬で、最近だとコロナウイルスにも効くかもってことが騒がれましたよね。いわゆる既存(きそん、すでにある)の薬を別の疾患へと適応拡大する策は時間とお金というコストを最大限にカットでき皆が嬉しいことではありますが、クロロキンそのものを使うの可動かというと副作用もあるので微妙なところだとは思います。現にブラジルでの治験の結果、心肺機能がやられて亡くなった方々がいたと記憶しています。事実、PDACでオートファジーを欠損した場合とマウスにクロロキンを投与した場合でのパターンは異なっているので、クロロキンががん細胞以外を標的として何かをすることで薬効を示している可能性すら無きにしもあらずかと。
別の患者
別の患者 嫌!
微妙なところだとは思います。 = 別の患者にこれからはこの方法は使わない。
使わないなら良い。
別の患者に使っちゃいや!
そもそも、別の患者作ったり見つけちゃいや!
ブラジルの治験の結果。
ブラジル。
君 違うとこでも実験したの?
嫌!
方々。
!
方々嫌っ
違う人嫌!
いやいやいや!
なくなった方々がいた。
生き返らせちゃ嫌!
クロロキンの時=4/8 私がインスタはじめた日か。
クロロキンのパターン=あの歌か。Wacci。 歌詞だけみて 聞きたくないと思って 曲も聞いてない。
「え?どっち?」の方法でしょ。
これやめてって前もう言った!
それに クロロキンは50キロ以上の人じゃなきゃ使っちゃいけないの。私50キロないからダメっ
「えどっち」 嫌
前ダメ言ったの掘り返すのダメよ
ただコンセプトとして、癌細胞でのオートファジーを特異的に抑えるシステムさえ確立できれば、もっと安全に膵臓がんへの免疫療法を効果的にすることができるかもしれません。言うは易しですが。戯言(タワゴト 冗談・馬鹿げた話)御免(ごめん)。
冗談なの?
冗談 じゃなくて
真面目にやって
大隈先生の髭も嫌ー
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